広告や広報活動の効果測定について

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広告や広報活動の効果測定は気になるテーマだ。ずっと曖昧だったものが、ネット広告でCTRやコンバージョン率などの数値による効果測定ができるようになったおかげで、なんだかビシッとした数値で表せるような錯覚をしてしまうが、果たしてネット広告と同じように測定できるのだろうか?

 バナー広告やGoogleのAdSenseのようなターゲティング広告は、基本的には「購入」や「資料請求」、「会員登録(個人情報収集)」といった直接的なアクションがゴールとして設定されている。よって成果は件数として把握することができる。
 しかし、このような事例はコミュニケーション活動のほんの一部のみを扱っており、どちらかというとSP分野のクロスマーチャンダイジングのようなものかもしれない。

 人と人が何らかのコミュニケーションをする場合、相手のことをもっと知りたいとか、自分のことをもっと知ってもらいたいとか、双方の関係を良好に保ちたいとか、そういった緩やかなコミュニケーションがあって、そうやって信頼関係が築けた上でいっしょに食事に行ったり、遊びに行ったり、場合によっては結婚したりするのではないだろうか。
 個と個の関係では、お互いの関係の段階に合わせて、名前を覚えてもらったり、興味を引いたり、誠実さや信頼感をアピールしたりしながら、ステップを踏んで親密になっていくのが正当なコミュニケーションだろう。

 法人や商品と消費者(マス)との関係においても同様で、結局は「認知」「関心」「理解」のを深めていくのが王道のフレームだろう。効果測定においてもこの基本フレームが基本となるのではないか。広報主体や商品の特性に合わせてブレイクダウンした物差しを作成し、定点観測調査やパネル調査を用いて活動前後の相対比較で評価するのが最も妥当な方法ではないだろうか。(もちろん小規模な活動の効果が捕捉しづらい欠点は解決する必要がある)

 コミュニケーションの及ぼす効果というものが内面への効果である以上、アクションを成果として効果測定するのは少し乱暴すぎると思う。例えば良いと思った人の3割が購入する商品があったとすれば、良いと思う人数が増えれば比例して売上も伸びるので、売上を効果指標の代理として使えないことはないが、ほかの要素が多すぎるためあくまで代理にしかならない。
 費用対効果の把握ができることと、本来の効果(目的に対する達成度)を把握することを混同してしまっているのが、今の広告効果測定の課題ではないだろうか。

 また、これに関しては「電通 vs Google」のような構図で語られることにも問題があると思う。Googleを広告代理店とみるのは適当ではなく、正しくはフジテレビvs Googleとか、朝日新聞vs Googleといったメディアとの対比で語られるべきだろう。
 既存媒体が生き残るためには、Googleとの対決をいつまでも広告代理店に「代理」させず、効果測定の研究にもっと真剣に取り組まなければいけない。それは視聴者や読者である生活者と関係を続けていく上での責任とも言えるのではないだろうか。

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このページは、が2007年9月10日 22:20に書いたブログ記事です。

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