地方自治体のアンテナショップのミッションを整理する

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地域が特産品や県名の認知度を上げるため、主に都心部に出店する物産店や飲食店のアンテナショップについて考えてみたい。

まず、そもそも出店のねらいや目的は何か。ざっと挙げてみる。

1. 販売売上(一般消費者向け)
2. 地域特産物の販路拡大(飲食店・卸商等ビジネス向け)
3. 地域特産物の認知拡大
4. 都市部の動向リサーチ(トレンド情報等マーケティング情報の収集)
5. 地名のイメージアップ(地域ブランド化)
6. 観光誘致
7. 雇用確保(工場・事業所等の誘致)
8. Iターン、Uターン等の移住促進

ショップでも飲食店でも売上や利益が確保できるかどうかは重要な指標であろう。ただし2〜8の目標のプライオリティが高い場合は赤字でも広告費と考えれば十分ペイする場合もある。毎年1億円の赤字が出たとしても、どんどん工場誘致が進めば自治体単位では黒字という判断である。どれを重視するかによって立地も変わってくる。
ただ問題は2〜8の目標は成果を数値で捉えて検証しにくい点だろう。本当にペイしているのかどうかの評価が客観的に示せなければ無駄づかいと言われかねない。

また、県や市町村という漠然とした実施主体ではなく、もう少し具体的にステークホルダーの視点で考えていくことも重要だ。

自治体が主体となって、税金を使って運営する方式のアンテナショップの場合、住民の関心は税金の使われ方(すなわち収支)になるだろう。厳しい地方財政の中で赤字を垂れ流されてはたまらない。
一方で、商工会や農協に加入している商店や団体にとっては、自社商品の販売機会が増えるので、赤字運営で閉店されるより人気店となってどんどん売ってくれるほうが当然ありがたいが、たとえ運営費が赤字でもメリットは十分にある。負担金や返品時の対処など小さな課題はあるかもしれないが、大きく見ると反対する理由は無い。
旅館などの観光業界にしてみれば、本当は観光キャンペーンの方がありがたいが、何もしないよりは効果が期待できるので、こちらも反対する理由が無い。
役所にとっては、商業振興・農業振興・観光振興に加えて誘致や定住施策もできるツールを持てるので悪い話ではないが、予算や効果のとりまとめを担当するので、変なことはできない部署でもある。
そして首長さんの選挙対策としての視点。とにかくどんな方法で出店したとしても、商工会議所や農協などの団体票に対しては有効だろう。補助金や公共事業と言うのは言いすぎだと思うが、その系統の施策であることも間違いない。ここは見逃してはいけないポイントである。
要するに、地酒が有名で居酒屋としてアンテナショップを出せば人気が出て黒字になるのは間違いないと予想できても、それは酒造組合がやればいい話であって、自治体のアンテナショップとしては片手落ちなのである。

普通にマーケティング発想で考えれば、立地やターゲット、競合との差別化、話題性などから出店戦略を考えていくが、ソーシャルマーケティングの場合はそれにも増して「みんなの納得」をどう形成していくかが鍵になる。
・・・だからといって総花的に棚割してなんでもかんでも均等に扱えば、閑古鳥しかやってこない店舗になって撤退するハメになる。最大公約数が解にならないのが難しい。

総花的に集める個々のアイテムの魅力を高めるか、「○○県ブランド」のように傘となる冠ブランドの魅力を高めるというのが、無難ではあるがオーソドックスな答えだろう。
もちろん、「その地域ブランドを向上させるためにアンテナショップを出したいんですけど・・・」ということもあるだろう。そういった場合は地域の気候や風土、人間性などの魅力や特徴を訴え、いい商品ができるバックグラウンドを紹介することに重点を置いた店作りとし、広告だと割り切ってスタートした方が、結局は効果を生むのではないだろうか。
費用もノウハウも十分ではなく、しかも尖ることも許されないという条件が変えられないとすれば、目的を尖らせるしかない。

このブログ記事について

このページは、が2007年9月 6日 22:34に書いたブログ記事です。

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